医療現場における慢性的な看護師不足は深刻で、どこの医療機関も看護師の獲得が重大な課題であると言えるだろう。病床数に対して看護師の数が多いほど診療報酬が増やされる制度もあり、看護師の確保は経営上も欠かせない重要事項である。しかし、看護師資格を持ちながら、看護師として働いていない人の数は少なくない。有資格者なのに看護師として勤務していない人材は、潜在看護師と呼ばれている。看護師として長期間勤めて看護スキルを高めていた人であっても、出産や子育てをきっかけとして職場を離れてしまうと、医療技術が日進月歩の現場についていける自信が無く、復職のタイミングを失ってしまうのだ。このような潜在看護師の中には、復職を希望する者も少なくない。
たしかに、数年のブランクであれば、復職後の努力で医療技術を習得できるが、10年以上の空白期間となると、現場に復帰してから勤務の中で医療技術を学び直すことは容易ではない。そこで、復職を希望しつつ躊躇っている潜在看護師が現場に復帰できるよう、様々な企画が立案されている。日本看護協会は、復職を希望する看護師に就職先を紹介するだけでなく、潜在看護師が最新の医療知識やスキルを身につけ自信を持って復職できるよう看護職復職支援研修を実施しているのだ。この看護職復職支援研修は、看護師資格を有する者なら誰でも参加でき、座学のみならず実習も体験できて、現場で必要な医療技術を習得することが可能だ。また、実習先を受講生が選択するので、子育て中の看護師なども近隣の医療施設で実習でき、参加しやすい研修だと言えるだろう。